トヨタ、学校推薦を廃止 新卒の技術系 自由応募に

トヨタ自動車は2022年春に卒業・修了予定の技術職の新卒採用について、研究室などの学校推薦を廃止することを決めた。事務系と同じく自由応募のみとする。学生側の選択肢を広げるとともに、多様な人材を集める狙いがある。安定的に技術者を確保できるとして学校推薦を続ける方針の企業が多い中、トヨタの方針転換の影響に注目が集まる。

トヨタの技術職採用ではこれまで、大学や大学院の研究室から推薦を受けて入社する学生の方が多かった。事実上、各研究室に推薦枠がある形になっているが、今後はそうした研究室に所属しない学生もトヨタを選びやすくなる。20年春の技術職採用は学部卒と大学院修了を合わせて約400人だった。

自動車業界は100年に1度の変革期とされ、自動運転など「CASE」と呼ばれる次世代技術の開発が進む。トヨタは人工知能(AI)やビッグデータなど自動車関連以外を学んだ学生の採用にも積極的で自由採用に切り替えることで技術者の幅を広げる狙いがある。

大手メーカーは、技術的な基礎を学んできた理系の学生を毎年一定量採用するため、学校推薦を重視している。ホンダやマツダなどトヨタ以外の主要自動車メーカーは学校推薦での採用を続ける方針だ。

ソニーも一時学校推薦をやめていたが、必要な人材を効率的に集めるため、16年卒業生の採用から制度を再開している。

企業の採用動向を分析しているProFuture(東京・千代田)と、学生と企業の採用マッチングを手掛けるPOL(同)の調査によると、理系学生の24%が大学推薦で入社予定企業を選んでいるという。POLは「技術職は常に不足しており、安定的に確保できる大学推薦を重視する動きに変わりはない」と分析する。

大学側は対応を迫られそうだ。都内私立大学のキャリアセンターによると、トヨタから11月に学校推薦を廃止する通知があった。同大でトヨタに採用される技術職の大半は推薦経由のため「制度がなくなるのは痛手。不安を抱える学生が増えそうだ」と話す。

ただ、企業が人材に求める能力が多様化するなか、採用形態を増やそうとする企業も多い。日本の製造業を代表するトヨタが慣例を見直すことで、他社の採用にも影響を与える可能性がある。

[日経電子版 2020年11月21日 掲載]

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