次世代リーダーの転職学

DX時代を生き抜く8つの人材像 価値を高める働き方

ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

頼られる人材や外部ネットワークを持つ人材はニーズが高い(写真はイメージ) =PIXTA
頼られる人材や外部ネットワークを持つ人材はニーズが高い(写真はイメージ) =PIXTA

前回の記事「激変する働き方 今後10年のキャリア構築、ポイントは」では、今後10年のキャリア構築のポイントとして、「いつでも自立できる準備をすること」を提案しました。今回はさらに踏み込んで、これからの10年に求められる人材像を考えてみたいと思います。データサイエンス、人工知能(AI)、ロボティクスなど、人口減少に歯止めがきかない中で世界中がデジタルトランスフォーメーション(DX)を強化していく中で、求められる人材像はどう変化していくのか。皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

「どんな人材が求められるか?」という本題の前に、「どんな人材がキャリア構築の落とし穴にはまってしまうのか?」をまず整理します。

結論を言うと、過去の経験にしばられた思考を持つ人は、これからのキャリア構築に相当な苦労をされる可能性が高いと思います。特に多いのが、「過去の経験値の延長線上で、自分の価値を推しはかろうとする」人。時代の変化で、経験やスキルの市場価値が変化していく中で、個人としての自負と市場の評価にギャップが出てきてしまうと、マッチングは相当厳しくなってしまいます。

次に、退職を考える理由が「報酬や権限、人間関係の不満」という人。受け身な態度になればなるほど、市場価値が目減りしてしまうので、納得できるキャリアチェンジができる可能性は徐々に減っていくと思われます。

「慣性の法則」から抜け出さなければ生き残れない

最悪の場合、いざ転職活動を始めたときに、「自分の経験を生かせる職場はどこでしょうか。希望年収としてはこれまでの年収水準は維持したいのですが」というように、自分が提供できる価値を横に置いたまま、自分の「値付け」を先行させることになり、企業との心理的な隔たりまで、大きくなってしまいかねません。

また、正常化バイアスがマイナスの影響を及ぼすこともあります。たとえば、家電メーカーに長く勤めていた人から転職相談を受けたときの話なのですが、転職を考えた理由は「日本の家電業界全体が競争力を失い、沈下傾向にあること」であるにもかかわらず、転職先の希望業界は「これまでの経験を生かせる家電業界で、いい会社があれば教えてほしい」という回答。業界全体の課題を十分に知っているはずなのに、いざとなると、どこかに見逃したオアシスがあるのではないかと思ってしまう。自分が矛盾していることにも無自覚になってしまう典型的な正常化バイアスです。

このような「慣性の法則」から抜け出し、ゼロベースで今後のキャリアを考えなければいけないのが、これからのキャリア形成の特徴です。

「忠実な運用者」から「仕組みづくりができる人」へのキャリアチェンジ

昭和の高度成長期に始まった工業化社会の時代は、結果として、終身雇用や年功序列、そしてメンバーシップ型の雇用慣行を日本に深く根付かせました。それが1980年代までの日本の成長を支えたことは事実です。

しかし、バブル崩壊以降のいわゆる「失われた20年」、そしてリーマン・ショック以降、世界の中での存在感をより失った10年の合計30年間には、そうした雇用慣行が大きなブレーキとなってきました。メンバーシップ型雇用の下で、総合職として採用され、職種や勤務地も会社都合に左右されることが当たり前だったため、個人の自由意志でジョブ型のキャリア形成をしていくことも不可能でした。

その時代に求められたのは、完成された組織における「忠実な運用担当者」でした。今も多くの業界でその名残はありますが、定型的な業務に小さな工夫を加えて運用していく仕事は、徐々に付加価値が下がり、業務の時間当たり単価は低下しています。

あわせて、次第に正規雇用から派遣や業務委託、アルバイトなどの非正規労働の職域に転換しています。アウトソーシングという形で社内業務でなくなっていくものもまだまだ増えるはずです。

これからの時代は、完成されたビジネスモデルを粛々と運用していく「運用する人」の時代ではなく、絶えずPDCA(Plan・計画→Do・実行→Check・評価→Action・改善)を回し、新たなビジネスモデルを試行錯誤しながらつくり上げていくという「仕組みをつくる人」が求められる時代になります。

「頼れる、手が動く、必要とされる」 人材の新条件とは?

では、実際に仕組みをつくっていく人とはどんな人でしょうか。そして、どんな能力を持っている必要があるのでしょうか。

まず大前提として、以下の観点が重視される傾向にあることを頭にとどめておいてほしいと思います。業界や個別企業によって違いはありますが、中途採用のシーンでの大きな傾向をくくりだしてみます。

観点(1) 個人での成果より、組織での成果

属人的で再現性の薄い個人成果の集積ではなく、柔軟なチームプレーによる組織成果の最大化に貢献できるかどうかを求める企業が増えています。より組織的な動きに貢献できるかどうかは重要な視点です。

観点(2) 指示待ち型人材より、テーマ設定型人材

会社の経営者や上司から降ろされてくるテーマや指示を待っている人材ではなく、各自が自分のミッションからテーマを発見し、合意を取って、それに向かっていく「自走度」の高い人材が求められています。

観点(3) 自前型人材より、ネットワーク型人材

企業が市場価値を高めていく際に、従来のような自前主義だけでは大きな成果を生み出せないことも増えています。社員も同様で、自分の力だけで乗り切ろうとするのではなく、社内外のリソースやテクノロジーを活用して会社の枠を超えたプロジェクト方式で事業を展開していく必要性も高まっているため、ネットワークを持つ人材は活躍機会が増えています。

観点(4) 固定ミッション型人材より、遊軍型人材

経営を取り巻く外部環境の変化が激しくなると、営業や企画や製造など、決められたポジションに固定されているよりは、状況に合わせて必要な部署にフォローに入る多能的な人材が高く評価される場面が増えます。事業全体を俯瞰(ふかん)できる視力が必要です。

また、組織構造も、従来のような事業本部があり、事業部があり、部があって、その下にグループがあるといった階層がショートカットされ、いわゆる「文鎮型」へフラットになる傾向があります。その構造の中では、ベテランであっても、ひたすらマネジャーとして指揮管理するだけではなく、ハンズオンで自ら手を動かして、現場を走れるかどうかということが当たり前のように求められるようになっています。

「この人は現場で手が動かせる人ですか」。人材紹介の現場で、候補者について企業からこういった確認の問い合わせを受けることが当たり前になっています。

この前提の中で最後に、今後より必要とされる可能性が高い人材の能力・志向をまとめてみると以下のようになります。

●今後10年に市場価値が高まる「働き方」の志向・価値観

【ミッション志向】
見かけの役職・年収にこだわらず、現実のミッションの重さや裁量の自由度にこだわる

【挑戦志向】
自分の経験分野やスキルにこだわらず、新しい価値創造へのチャレンジを好む

【貢献志向】
企業から安定や保護をもらうことを期待するのではなく、自分が貢献できることを重視する

【ネットワーク志向】
業界や年齢など固定階層をまたいで幅広いネットワークを持っている

【ポジティブ志向】
業務の精度や慎重さはあるが、基本的に楽観的・前向きな傾向が強い

【水平志向】
コトやヒトの価値判断がフラットで、過去の成功・失敗体験に縛られない。決めつけ、思い込みがない。

【包容性】
理想と現実のギャップへの柔軟性や、理想通りに進まないことを飲み込んで前進させていく力がある

【矢面志向】
悲観的な状況や、絶望的なトラブルでも簡単に折れず、高い当事者意識で壁を乗り越える態度を失わない

前提となるのは、自立したビジネスパーソンとして自ら考え、当事者意識を持って、会社ではなく、市場や顧客に貢献しようとする人材です。激変する環境で、キャリアを考える際の参考に活用していただければ幸いです。

黒田真行

ルーセントドアーズ代表取締役。日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」を運営。2019年、中高年のキャリア相談プラットフォーム「Can Will」開設。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』、ほか。「Career Release40」 http://lucentdoors.co.jp/cr40/ 「Can Will」 https://canwill.jp/

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2020年10月16日 掲載]

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