こんなはずでは... 1年内で再転職、3パターンと回避策

経営者JP社長 井上和幸

相次ぐ早期の転職は時間の浪費と印象の悪化につながりかねない(写真はイメージ) =PIXTA
相次ぐ早期の転職は時間の浪費と印象の悪化につながりかねない(写真はイメージ) =PIXTA

当社にもこうした短期間での転職に関する「駆け込み寺」的な相談が寄せられ続けています。例えば当社には様々なチャネルからの転職相談が入りますが、その一つである転職登録ポータルサイト経由でここ数日で当社に登録した約300人の経歴をチェックしてみたところ、その約3分の1が2019年~20年に転職したばかりの人たちでした。

「入社後、約束が違ったので辞めました」

せっかくの転職活動がいったん水の泡になり、早期離職というリスク、短期転職という経歴の傷を負ってしまうこうしたアクション。当の本人とて、好き好んでこのような仕切り直し転職に踏み切っているわけではないでしょう。

そもそも、なぜこのようなことになってしまったのか。どうすれば回避できるのでしょうか。「仕切り直し転職」に追い込まれた代表的な3つのケースから考えてみたいと思います。

理由・その1「入社してみたら、オファー時の内容と実際の諸条件や職務内容が異なっていた」

まず最初のケースは、給与額や賞与支給が入社前の約束と異なるなど、条件の相違に起因するものです。これはそもそも、実際にそうであれば100%採用した企業側の責となる事態であり、本来、そうそう起きません。万が一起きた場合は係争になり、企業側に約束通りの支払いをする義務があります。

ところが、実際にこうした事態に遭遇したという転職者に話を聞くと、正式に発行されるべき採用内定通知書などのオファーレター書面を持っていないケースがあります。レターを持っている場合は、記載された内容通りに企業側が報酬を支払い職務をアサインしていて、本人が事前に約束したという内容とは異なるということが非常に多くあります。

これは転職者側が気楽にオファーを受けてしまった、あるいは焦って転職先を決めてしまったケースに多く起こります。それがゆえにあいまいなままで採用条件を聞いていたり、解釈の違いを生んでしまっていたりということも、かなり多く起こっているのが現実です。

言ってしまえば当たり前のことではあるのですが、雇用条件は冷静にデジタルにしっかり確認すること。採用してもらう側ということで遠慮してしまう人もいると思いますが、こうしたことはあとでもめ事になるほうがむしろ大問題です。直接確認しにくかったらエージェントの担当者に代理で聞いてもらうなどしてください。

「入社後、人間関係に耐えられませんでした」

理由・その2「入社したら、上長や経営者と相性が悪かった」

次に、企業や組織の風土と肌が合わないミスマッチのケースです。入社してみたら、物事の進め方のスタイルが前職までと全く異なり、ストレスである。価値観やコミュニケーションのスタイルが自分のものと相いれず、体質的に受け入れられない。直属の上長や同僚、あるいは社長などとお互いしっくりこない、相性が悪くてギクシャクしてしまい、仕事どころではない。こういったケースも珍しくありません。

カルチャーミスマッチを起こす人には、目先の年収や肩書にこだわって転職先を選択するタイプが多いです。条件にひかれて、「それであれば、多少のことは我慢できるだろう」と判断したケースです。

よくよく振り返ってもらうと、大概の場合、既に採用選考中に実は「何か肌が合わないな」「コミュニケーションが必ずしもスムーズとはいえない」というようなことが起きているものです。それを見て見ないふりをしてしまった格好です。

こうしたミスマッチは、もちろん採用企業側にも大きな責任があると、私は思います。人物的には必ずしもしっくりきていないのに、スキルは満たしているからとか、会社事情でそのポジションを早く充足させたいからということで、妥協して採用してしまう。こうした判断は相手の入社者にも、もちろん自社にも大きな不利益をもたらします。

採用企業側についてはウィズコロナ下での幹部採用において、各社ともかなりしっかりと確認判断をするようになっているので、これまでよりも採用側の最終判断においてリスクが回避されると感じています。

入社はあくまでもスタートライン。中長期的に自分らしく働き、成果を出していくために大切にすべきことは何か、改めてしっかり見つめ直し、次の新天地を選んでほしいと思います。

「入社後、職務を果たせませんでした」

理由・その3「アサインされた職務は荷が重すぎた」

代表例の最後として挙げられるのは、転職者側の能力・スキル不足です。好条件のポジションに、内心では「できるかな」と不安を感じつつも、背伸びして入社してしまったケースです。

しかし、いざ実際に着任してみると、経験不足やスキル・専門性不足、あるいは求められるレベル感についていけず、全くワークできない。あるいは事前の確認不足のせいで、自分に務まると思って入社してみたら、求められるものとかなりギャップがあり、役割を全うできない。その結果、早々にお互いがギクシャクし、あるいは超ストレス状態となり、またあるいは上長や社長に、どうなっているんだと問われ、辞めざるをえなくなる。こういったパターンです。

実はこの「要件ミスマッチ」と、その1の「オファー時と入社後の相違」が絡んでいるケースは、これまで何度も見てきました。たとえば、部長としての職責を前提に諸条件を約束したものの、入社後即、それが無理であることが露見。会社側としては辞めさせるわけにもいかず、課長に変更する、あるいは別の職務に振り替える。これを転職者側としては、入社前の約束した職責と異なるものに振り替えられたと受け取っている状況ですね。

これももちろん採用側の見極め責任があるのですが、転職者側としても選考中に誇大なプレゼンテーションをしていたのではないか、過剰な背伸びをしていなかったかと、改めて見つめ直してみてほしいと思います。

次の転職では、無理せず、等身大の自分を確認し、それを応募先企業に素直に見せること。それで選ばれなかったとすれば、入社後に無理をして、結果、仕切り直し転職をせざるをえなくなってしまうような可能性を回避できたのだと思えばよいのです。

ちなみに、こうした仕切り直し転職をこれまで既に1度ならず繰り返してしまっている人も少なくありません。そうした人が次の転職活動で不利になるということを嫌って、短期間で入社・退職をした企業の履歴について、自身の職歴から消去してしまう人がいるようです。

あろうことか、ヘッドハンターや人材エージェントがこうした短期間離職をした登録者に対して、その経歴を削除するようアドバイスしているケースもあると聞きますが、こうしたことは絶対にしてはなりません。明らかな経歴詐称となり、採用内定の取り消しや入社した企業の解雇要件に該当します。後々、取り返しのつかないことになりますから、重々留意してください。

転職活動時には夢もみますし、過剰に自分をよく見せようとして「日常から乖離(かいり)した自分」を演じてしまうことは世の常です。今後、さらに厳しさを増す可能性の高い転職市場において、焦りから拙速な選択や過剰な妥協をしてしまうミドルシニアも増えかねないと感じています。

しかし、それがゆえに結果として仕切り直し転職に至ってしまい、転職活動に人生の時間を2倍、3倍と費やすことになってしまっては、せっかく自分を高めるための時間を減らしてしまうことになりかねません。このことを転職活動時点でしっかり踏まえて、確実に活躍できる新天地の選択を、このウィズコロナ下に読者の皆さんには徹底してほしいと願っています。

井上和幸

経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

[NIKKEI STYLE 出世ナビ 2020年09月18日 掲載]

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