いざ転職、退職のマナーは 

予定逆算、書類の確認を

退職願・退職届の提出は、就業規則を必ず確認しよう
退職願・退職届の提出は、就業規則を必ず確認しよう

終身雇用にこだわらない人が増え、転職をしたり検討したりすることが珍しくなくなってきた。年度初めだけでなく通年で中途採用をしている企業も多い。いざ転職の意思を固めたり、内定をもらったりしたら今の勤務先にどう伝え、何をすべきなのか。専門家に聞いた。

退職のスケジュールはやめたい時期から逆算して組み立てること。なるべく退社日が繁忙期と重ならないようにする。転職先との面接では入社時期を提示されるが「無理に合わせてしまうと後で困ることもあるので、余裕をもって退職可能な時期を伝えること」と話すのは「マイナビ転職」編集長の荻田泰夫さん。

プロジェクトなど仕事が一段落する時期や、引き継ぎに時間がかかることなどを正直に伝えることは、むしろ「責任感がある人」と好印象を持たれる。通年で中途採用している会計ソフトのfreeeでは「面接で相談してもらえれば、次の選考や入社の時期を調整している」(採用担当の吉村美音さん)という。

ただ、一般的な若手社員の場合、企業は「入社日を3カ月以上先にしてくれないこともある」(転職エージェントmorich代表取締役の森本千賀子さん)。引き留めにあって内定を辞退された......ということを避けるためだ。

退職の意思を固めたら、まずは直属の上司に伝えるのが原則だ。先にほかの人に話すと気分を損ない、不要なトラブルが生じる懸念がある。

引き留めにはどう対応すればいいのだろうか。「退職の意思を伝えたら、上司に『決める前に相談してほしかった』と言われた。お世話になった人だったので、事前に話をすべきだったと少し後悔した」と話すのは、新卒入社した企業から外資系ITに転職をした都内在住の30代女性。悩みどころだが「内定をもらう前に打ち明けると、引き留めにはあいやすい」(荻田さん)。

逆にいうと、転職先がすでに決定していれば翻意が難しいと企業も理解していることが多いという。そのため、引き留められても曖昧な態度を取らずにハッキリと退職の意思を伝える。トラブルが生じた場合は、労働局や労働基準監督署の総合労働相談コーナーに相談する。

転職には書類も必要だ。退職が決まったら「退職届」を提出する。一般的に「退職願」は会社へ退職を打診する書類、「退職届」は退職が認められた後に届け出る書類、という違いはあるが「退職届でも形式上『願』として提出する、というケースもある」と荻田さん。会社の就業規則を確認するとよい。テレビドラマなどでおなじみの「辞表」は、経営層や公務員が職を辞するときに届け出る書類を指す。

仕事の引き継ぎもしっかりと。取引先には後任者を紹介し、今後の体制をきちんと説明する。まずは上司とタイミングを相談し、取引先に迷惑がかからない準備を整えた上で伝える。

会社から入手すべき書類もある。「雇用保険被保険者証」「年金手帳」「源泉徴収票」を受け取るのも忘れずに。転職先が決まっていない場合は「離職票」をもらう。離職票、源泉徴収票は退職後の発行となるので、自宅に郵送してもらうよう人事に確認しておく。パソコンや社員証、名刺などの返却、机の上などの整理も最終日までに必ず終える。最終日はお世話になった上司や同僚が忙しくないタイミングを見計らってあいさつを。そして終業時間前にあらかじめ作成しておいたお礼のメールを送信する。

上司に引き留められて退職を撤回するというケースも時々ある。その場合に不利益はあるのだろうか。「終身雇用が当たり前の時代は『ブラックリストに載るよ』と言われたこともあったが、今は転職意向は多くの人が持っていると理解されている」と森本さん。周囲の目より「自分の気持ちをその会社に戻せるか」を考えてみよう。一度きりの人生、後悔のない選択をしたい。

(砂山絵理子)

[日経電子版 2020年09月29日 掲載]

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