1人当たり売上高伸びた中堅、1位はグレイステクノロジー

グレイステクロノジーは音声と光などでマニュアル通りに作業を誘導するデバイスの導入を進める
グレイステクロノジーは音声と光などでマニュアル通りに作業を誘導するデバイスの導入を進める

日本経済新聞社が中堅上場企業「NEXT1000」を対象に、3年前と比べた2020年4~6月期の従業員1人当たりの売上高伸び率をランキングしたところ、上位はデジタル技術で業務変革を支援する企業が目立った。1位はマニュアル作成支援のグレイステクノロジー。ウェブ上でマニュアルを一元管理できる利便性の高いサービスが顧客をつかんでいる。

■1位 グレイステクノロジー、クラウドでマニュアル進化

「海外では日本のマニュアルはジョーク(冗談のように稚拙)だとよくいわれる」。グレイステクノロジーの松村幸治会長は、日本企業の製品マニュアルの問題点をこう指摘する。

日本の産業機器メーカーなどは、技術者が本業である開発の片手間で、製品の操作やメンテナンスのマニュアルを作ることが多い。誤字や脱字、用語やデザインに統一感がないなど、品質にばらつきがある。海外の顧客向けに英語やフランス語、中国語など様々な外国語の翻訳版も用意しているが、誤訳が多く、問い合わせや苦情が絶えない。

グレイステクノロジーが手掛けるのは、マニュアル作成業務の代行だ。具体的な扱い方の内容を聞き取りしながら、社内用語を統一したり、作業内容が分かりやすい写真やイラストに作り直したりする。使い勝手を高めるため、もともと1ページしかなかった目次が16ページに増える場合もある。

グレイステクノロジーは1984年、日本で初めてBtoB(企業間取引)のマニュアル作成を支援する企業として創業。建設機械や半導体製造装置といった専門知識を必要とする製品に強みがある。近年は需要の増加に伴い、1ページ当たりの単価は20万円超と上昇傾向だ。「機械や製品特性、市場を熟知している」(松村氏)ため、製造業関連の顧客を多く抱えている。

新型コロナウイルス感染拡大による在宅勤務や作業員を減らしての工場稼働など働き方が大きく変わったことで、「工場のライン管理など様々なマニュアルの見直しの依頼が殺到している」(松村氏)と言い案件が膨大で断る場合も多い。

IT化の進展で機能更新も頻繁に起こるなか、最近人気なのが顧客がクラウド上でマニュアルを管理・更新するサービス「e-manual」だ。ウェブ上に入力するだけで自動的に汎用性の高い形式にデータを整えたり、自動でレイアウトを調整したりするため制作コストを抑えられる。銀行や証券会社など幅広い業種で導入され、あるIT(情報技術)企業は同サービスの導入で年間20億円以上のコスト削減ができたという。

近年は利益重視の経営を掲げており、採算の良い案件を厳選してきた。この8年間で取引社数が162社と4割減る一方で、1社あたり売上高は1174万円と5倍に拡大した。マニュアル作成の分析やコンサルティングなどの付加価値の高い業務は自社で担う一方でマニュアルの文章作成や翻訳は外注。過剰な従業員を抱えることなく、高収益体質に転換したことで、2020年3月期の売上高営業利益率は50%(前の期は38%)に上昇した。

さらなる飛躍に向けて力を入れるのが、メガネ型ののデジタルマニュアルの展開だ。専用のメガネ機器を装着すると、利用者が見ている光景に操作の手順などが映し出される。「次の操作は?」などと声を発すると音声と光の矢印で手順を誘導してくれる仕組みで、監視や遠隔支援も可能だ。既に大手メーカーへの納品実績があり、今後は機器の軽量化などを進め拡販する。

足元の従業員数は約40人で需要の増加に追いついていない。今後は新卒や中途採用だけではなく、制作会社やデザイン会社のM&A(合併・買収)なども通じて人員を拡大する予定だ。

■3位 イノベーション、企業間取引 ネットでつなぐ

イノベーションはコロナ禍で増す企業のIT需要を取り込んでいる
イノベーションはコロナ禍で増す企業のIT需要を取り込んでいる

イノベーションはインターネット上で企業間取引の営業活動を支援する。IT(情報技術)製品を紹介するサイトを運営し、閲覧した企業からの問い合わせ数に応じて製品を販売する企業から報酬を受け取る。「テレワークなどコロナ禍で企業のIT投資が増えている」(富田直人社長)といい、4~6月期のサイト来訪者は前年同期比2.5倍の396万人に増加。同期間の売上高は45%増えた。

自社でも以前からITを使った生産性の向上に取り組んでおり、「営業マンが顧客を訪問することはほとんどない」(富田社長)。ネット上の展示会などコロナ後をにらんだ新サービスの開発を進めるほか、投資家の資産運用を支援する独立系金融アドバイザー(IFA)事業など新たな収益源の育成にも力を入れる。

■4位 プロパティデータバンク、不動産情報の管理ツール

企業や不動産投資信託(REIT)向けに、不動産管理サービスを提供するプロパティデータバンクは、従業員1人当たり売上高を3年間で64%伸ばした。同社は清水建設の社内ベンチャーとして2000年に設立されて以降、クラウドを活用した不動産管理ツールの提供に特化してきた。事業用・投資用不動産の契約状況や収支、エネルギー使用、減価償却など多様な情報を一元的に管理できる。

従来の顧客はREITが多かったが、オフィスなど事業用不動産への対応を強化して近年は大手企業や不動産管理会社などとの契約が増えている。18年の東証マザーズへの上場の効果もあり、20年3月期の売上高は18億円とこの3年で7割増えた。板谷敏正社長は「幅広い営業が功を奏している」と話す。

■5位 チエル、ソフトでオンライン教材作成

チエルは大学や高校向けのオンライン学習支援システムを提供する。新型コロナウイルス禍でオンライン授業が広がったこともあり、eラーニング用教材を簡単に作成できるソフト「グレクサ」などの販売が大きく伸びた。従業員数は横ばいが続くなか、4~6月期の売上高は前年同期比で2.4倍に伸びた。

大学向けが売上高の7割を占めるが、2020年度中に小中学生全員に学習用端末を配備する「GIGAスクール」構想の前倒しを受け、小中学校向けの学習支援システムやデジタル教材の販売に力を入れる。授業中の教員が各生徒のパソコン画面を確認したり、教材を配布したりする作業が簡単にできるようにする。粟田輝取締役は「導入支援の担当者を増やして需要を取り込みたい」と話す。

調査の概要 直近決算期の売上高が100億円以下の企業(金融、TOKYO PRO Market上場企業を除く)976社のうち、3月期決算企業が対象。20年4~6月期の従業員1人当たり売上高の増加率が、3年前の同期間と比べて大きい順にランキングした。リストラなど一時的な影響を除外するため、従業員数が減ったり、21年3月期通期予想の売上高・営業利益が悪化したりする企業は除いた。データは9月11日時点

[日経電子版 2020年10月05日 掲載]

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