損保ジャパン、20代で課長も 脱・年功序列

働き方改革を進める損害保険ジャパン
働き方改革を進める損害保険ジャパン

損害保険ジャパンは年功序列から脱却する新たな人事制度をつくった。細切れだった役割等級を整理し、等級ごとの在任年数の目安も撤廃した。早くても40歳前後だった課長への昇進を10年ほど早め、仕組み上は20歳代での登用も可能にする。働き方改革を進め、社員それぞれの希望や能力に応じた処遇を実現する。

これまで5区分あった役割等級を3区分に改めた。「特命課長」「業務課長」「副長」など複数のポストを廃止し、約1万人の肩書を変える抜本的な対策となる。区分ごとに2~4年とされていた在留年数の目安も撤廃し、昇級のために必要な手順も減らす。能力や実績に応じてスピード感のある昇格を可能にする。

「グローバル職」「エリア職」といった区分で定められていた昇格方法の差もなくす。生活様式にあった働き方を選びやすくする。転勤を受け入れる社員には、人生設計のリスクに配慮して「転勤プレミアム」として賃金を上乗せする。

地方で働くことの多い自動車の事故調査の専門職はこれまで、管理職になるには必ず全国転勤が求められていた。今後は地方在住のまま昇進できるようにする。

損保ジャパンは旧損保ジャパンと旧日本興亜損害保険が2014年に合併して発足した。今回の人事改定は合併以来の大幅な改定となるという。親会社のSOMPOホールディングス(HD)は8月に桜田謙悟社長を本部長とする「働き方改革推進本部」を設置しており、今後もグループ全体で働き方改革に注力する方針だ。

損保ジャパンは能力に応じた登用の推進に併せて社員の再教育にも力を入れる。10月からは社内外の講師による年間40種類のライブ配信の授業と、グローバル戦略や地域創生などの取り組みを現場で担当するSOMPOグループの社員が講師となる20人前後のゼミを8つ開講する。

年次ごとに決まっていた研修内容は区別をなくし、損保ジャパンの2万5千人の社員のうち希望者が全員受けられるようにした。営業や保険金に関する業務のほかデジタルトランスフォーメーション(DX)やリーダーシップなども学べる。

地方の営業社員が保険商品の開発に参加できる「マーケットリサーチャー」の制度も9月に始めている。地方に勤務する5~15年目の社員を所属上長が推薦して本社の開発プロセスに関わる仕組みだ。23年までに200人以上を登用する計画。働く場所や肩書にとらわれずに、社内の人材を積極的に登用する。

IT(情報技術)との融合など大きな変化に直面する金融業では、実力のある若手の登用を促すための制度改革を各社が急いでいる。三井住友銀行は1月に人事制度を改定し、最短30歳で管理職に就けるようにした。

[日経電子版 2020年10月13日 掲載]

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