
三菱重工業は国内グループ従業員4万人を対象に人事評価制度を見直すことで検討に入った。2021年10月以降、役割や成果に応じて昇給する新たな仕組みとする。長年、年功序列や終身雇用を維持してきたが、世代交代への対応や優秀な若手を獲得するため成果ベースに移行する。伝統的な製造企業でも人事制度改革が本格化してきた。
このほど制度の前提となる規約変更で労働組合と合意した。賃金制度改定は工場主体だった組織を本社主導に大きく見直した13年以来となる。まず三菱重工本体や主要子会社を対象に導入。国内に70社あるグループ会社にも段階的に取り入れ、将来的には対象者を6万人にまで広げる計画だ。
制度の詳細は今後、詰めるが、年齢に応じて上がる「基本給」と役割や成果に応じて支給する「仕事給」の比重の変更などを検討している。
三菱重工は20年3月期の連結税引き前損益(国際会計基準)が20年ぶりの赤字に転落。21年3月期に入っても航空機事業低迷などで厳しい状況が続いている。三菱グループを代表する製造企業だが、近年は成長鈍化が鮮明で多方面での革新が急務とされ、人材活用のあり方が問われていた。
一連の人事改革の背景には造船や鉄鋼などの製造業で進む急速な世代交代がある。年齢に応じてノウハウを積み上げることを前提にした賃金制度を長く運用してきたが、熟練者の退職が進む中で若い世代のつなぎ留めが難しくなっている。異業種との人材の獲得競争も激しく、外国人やIT(情報技術)に精通した専門人材など多様な働き手の確保も求められる。
国内の主力の製造企業で人事評価制度の見直しが相次いでいる。
トヨタ自動車は定期昇給について、一律的な昇給をなくし、個人の評価で判断する制度を導入することで先月30日に組合と最終合意した。日本製鉄など鉄鋼大手も21年度の定年延長の導入にあわせ、全世代を対象にした新たな賃金制度を導入。 IHIは人工知能(AI)などの先端技術で高度な専門性を持つ人材を柔軟に雇用する新制度を5月に導入した。いずれも成果に応じて賃金が上がりやすい仕組みをつくるのが狙いだ。
[日経電子版 2020年10月19日 掲載]