キャリアコラム

転職×副業で年収5000万円超に 経験値を資産に変える

副業で4000万円のサラリーマン motoさん

副業で年収4000万円を稼ぎ注目されている現役サラリーマン、motoさん。地方の短大を卒業後、5回の転職を経てサラリーマンとしての年収も240万から1500万円まで増やした。SNSなどの発信を通じて多くのサラリーマンの支持を得るmotoさんに、転職と副業を組み合わせて収入を増やしていくキャリア戦略を聞いた。

――転職やキャリア形成について、どのようなスタンスで臨んできましたか。

「仕事をするうえで大切なことは『本業でどう成果を出すか』に尽きると思っています。本業で成果を出せない限りは道は開けないし、チャンスも巡ってこないからです。自分に与えられたチャンスを活用して、新たな機会を取りに行く。単に仕事が嫌で転職したいとか、お金が稼げたから会社を辞めるとか、そんなふうに行動してしまうと、いい転職もキャリア形成もできないと思います。機会をもらえる場所に行くために、目の前の仕事で最大限の成果を出す、というのがセオリーでしょう」

「そのうえで、私は自分の経験から『軸ずらし転職』というのを勧めています。年収は『業種』と『業界』で決まるというルールがあります。業種か業界のどちらかを変える転職をすることで年収を上げることができます。私は『小売り→人材業界→IT(情報技術)業界→広告業界』と、より平均年収が高い業界に転職をしてきました。そして、その経験値を資産にしようと、途中から副業を始めました」

活躍するのは「外からきた人」

――社会人としてのキャリアをホームセンターからスタートした理由を聞かせてもらえますか。

「ホームセンターを選んだ一番の理由は自分がもっとも成果を出しやすい環境だと考えたからでした。私には『30歳で年収1000万円』を稼ぎたいという漠然とした目標がありました。これは高校生のときに、『お金を持っているサラリーマンってどれくらい稼いでいるのかな』と思って調べたときに出てきた数字です」

「就職活動を始めてから大手企業を受けて、実際に内定もいただきました。しかし、いろいろな人に会って話を聞く中で、大企業で活躍している人は中途採用の人が多く、何らかの経験や実績をもった『外から入ってきた人たち』だということがわかりました。当時、私が内定をもらった会社は『総合職』での採用でした。入社するまで自分にどんな仕事が振られるのかわかりません。30歳になったとき、活躍できるポジションにいけるのかどうか、ロードマップが描けない。自分のキャリアをハンドリングできないのは嫌だと思い、もう一度就職活動をやり直すことにしました。自分が成果を出しやすい環境で経験を積んで、成果を出してから転職をしたほうが自分にとってはいいキャリアが築けるのではないかと考えました。それで、地元のホームセンターを選びました」

「日ごろから買い物にもよく行っていましたし『こうしたらお客さんはもっと買いやすいのに』ということも感じていました。地方のホームセンターですから、緻密なマーケティング戦略がとられている様子はなく、自分の力でそこにテコ入れして売り上げを伸ばしていけば、明確な数字の実績を作ることができると考えました」

まず目の前の仕事に全力

――初めて就職したときから、もう転職することを考えていたのですか。

「最初から『いつか転職したい』とは考えていましたし、結局1年半ほどで転職したのですが、まずは目の前の仕事に一生懸命取り組もうと思ってやっていました。新入社員はまずレジ打ちからでした。レジからはお客さんの様子がよくわかります。特定の時間帯に特定の商品がよく売れていたり、他のお店のレジ袋を下げていたり。それならば、この時間にこの位置にこの商品を並べておいたほうがいいのではないかとか、あの店がうちの競合になっているから商品ラインアップを参考にしようとか、自分のポジションでできる提案をしました。大手の内定を蹴って就職していましたから、ここで成果を出せなければ終わりだと思い、積極的に提案することなどは強く意識していました」

「転職のきっかけとなったのは、人事部に配属されたことでした。採用担当の仕事をやることになり、地方のホームセンターによりよい人材を呼び込むためには何をすればいいのかを考えて、人事担当者としてブログを書いて発信することを始めました。そのブログが次第に多くの就活生に見られるようになり、人材会社の人の目にも留まって人材会社への転職が決まります。ホームセンターのときの私の年収は240万円でした。それが2社目で330万円に。1年半で90万円上がるならと、納得して転職をしました」

――2社目の人材会社では、次の転職を考えて何か取り組んでいたことなどはありましたか。

「最初はわからないことが多かったので、先のことを考えるよりも、とにかく目の前の仕事に必死でした。この会社では営業をしていましたが、ホームセンターのときは名刺交換すらしたことがありません。中途で期待されて入っている自分に対して、『そんなこと当然できるでしょ』という雰囲気。当たり前のことができない中で成果を期待されるという状況はとてもきつかったです」

「それでも、学びが多いと思えましたし、プライドもあったので、周りの人に教えを請いながら、営業をゼロから学んで勉強しようという気持ちでやりました。徐々に成果が出始めて、私の担当エリアは競合他社を上回って1位に。それが知られるようになりヘッドハンティングがきて、次の転職につながりました。それがリクルートでした。業界最大手で年収もトップクラス。そこから声をかけてもらえたわけですから、『断る理由はない』と決断しました。リクルートにはマネジャーというポジションをもらって年収は540万円になりました」

会社の看板か個人の力か、錯覚しない

――当初目標としていた「30歳で年収1000万円」が現実的に見える業界最大手に入ったにもかかわらず、そこからさらに転職をしようと思ったのはなぜですか。

「リクルートには約4年いましたが、実績を積み上げる中で、自分の力なのか会社の看板の力なのかが次第にわからなくなったのです。リクルートです、と言えば、すぐにアポも取れますし、話もちゃんと聞いてもらえます。『錯覚資産』という意味では使いやすいと思いましたが、一方で自分の実力がついているのかどうかは疑問でした。個人としての力をしっかりとつけていかないと、30歳以降のキャリアがきつくなると考えました。そこでベンチャーに行こうと決心して、3度目の転職でスタートアップ企業に営業マネジャーとして入社します。27歳で年収は700万円になりました」

「最初は予想通り、電話でアポ一つ取るのにも苦戦しました。会社名を言っても簡単にはつないでもらえず、自分たちのサービスの知名度もないので、なかなか相手にしてもらえません。そんな中でも少しずつ実績を作って会社を大きくしていき、『自分が考えて、工夫して、行動したことだけがダイレクトに結果につながる』という体験が得られました」

「その体験をもって、4度目の転職でもベンチャー企業に転職しました。きっかけは4社目に勤めていた会社が大手に買収されることになったからです。30歳のときで、営業部長として入社した5社目の会社で、年収が1000万円になりました。『30歳で1000万円』という目標はここで達成することができました」

「昨年5度目の転職をして、現在は広告ベンチャーで営業部長をやっています。32歳で1500万円のオファーをいただきました。最初の2回の転職は企業のほうから声をかけてもらいましたが、その後の3回の転職は、すべて転職エージェントや転職サイトを使って自分で見つけた会社です」

――転職に関する情報発信を副業として始めたのはいつからですか。また、どんな考えで始めたのでしょうか。

「3度目の転職後、リクルートからスタートアップの会社に移った後です。大企業でも倒産やリストラが起こることを目の当たりにして『会社がいつどうなるかわからない』と、自分ごととして真剣に考えるようになりました。会社に寄りかかった働き方をして、もし会社がダメになったら自分はどうするのか、と考えて副業を始めてみようと思いました」

「この頃には転職を繰り返す中で得た知見もそれなりにたまっていました。転職サイトにどんなスキルを登録しておくと、どんなスカウトが増えるのかなどは常に分析していましたし、転職サイトも転職エージェントもほぼすべてに登録して、自分に合う、合わないも含めて、それぞれの特徴などもわかるようになっていました」

「『転職アンテナ』というブログを立ち上げて、同時にSNSの活用も始めました。これまで自分が使ってきた転職サイトの良いところや悪いところ、面接で話すべきこと、読んで役に立った本など、転職で必要な情報を網羅したブログを作りました。すべて自分の体験に基づいた内容です」

「2016年くらいから始めたこのブログが予想以上に注目されて、SNSでも話題になりました。『motoさん』というキャラクターも世の中に認知され始め、副業だけで年間4000万円の収入を得られるようになりました。ちょうど30歳で、このブログは法人化しました」

――副業の収入が本業を上回ったとき、本業を辞めようとは思いませんでしたか。

「私の中では、本業と副業は別軸だと思っています。組織の中で評価されて稼げる金額と、個人として稼ぐ金額は違うと思います。組織で働いて成果を出したいことと、自分個人がどこまで通用するかを試したいことは、求めているものが違います。お金を理由にその目的がどうでもよくなるということはありません」

「本業の中で得た経験や知見を、副業に還元するというスタンスです。もちろんその逆で、副業が本業に生かせることもあると思います。自分の経験値を資産に変えていくという考え方が一番いいのではないでしょうか。『趣味を副業にする』と言う人がいますが、私はこれには少し違和感があります。自分にとっては副業でも、お金を払う側からすれば、副業か本業かは関係ありません。お金をもらう以上はビジネスなので、相手の期待に応えなければならない。自分を一つの会社と見立てたときに、価値を返せるのかどうかという視点をしっかりともったほうがいいと思います」

ゴールは「企業に依存しない体質」

――今、転職や副業を考えている人たちに、何かアドバイスはありますか?

「大切なことは2つあると思います。まずは、目の前の仕事をとにかく頑張って最大限の成果を出すことです。もう1つは、次の次の転職まで見越して行動してみることです。転職というと、目の前にある今の仕事をおろそかにして、給料がよくて知名度もある表面的によく見える会社を選んでしまう人が多いような気がします。転職すること自体を目的にしてしまいがちです」

「転職はあくまでも手段です。転職することをゴールにするのではなく、転職した先でどうなって、その次でどうなりたいのか、自分の将来を見据えて行動していくことが大事だと思います」

「本当のゴールは『企業に依存しない体質を作ること』ではないでしょうか。会社の言われるままになっていたり、自分の不満をすべて会社のせいにしてしまったりするのは、主語を『会社』として考えているからです。そうではなく、自分は何がしたいのか、自分には何ができるのか、という思考に改善したほうがいいと思います」

「新型コロナウィルスの影響で社会は大きく変化しようとしていますが、外部環境が変化しても、働き方の本質は変わらないのではないかと私は思っています。どうすればお金を増やせるか、どういう働き方をすれば給料は増えるのか、今の会社が自分にはベストなのか、もっと(自分が)必要とされる会社は他にないのかなど、いろいろな選択肢を自分の中に見いだすことで、可能性の幅は広がります。そのような考え方が、これからの時代はさらに広がっていけばいいと思っています」

moto(モト)
1987年生まれ。本名は戸塚俊介。長野県の短大を卒業後、地方ホームセンターに就職。転職によりリクルート、スタートアップなど6社を経験。現在は広告ベンチャーで営業部長を務める一方、副業として自身の体験をもとにしたブログ『転職アンテナ』(https://tenshoku-antenna.com/)を運営。現在は法人化し、「moto株式会社」の代表を務める。

[NIKKEI STYLE キャリア 2020年06月13日 掲載]

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