スカウトされる職務経歴書

経験豊富な40歳以上が陥る職務経歴書のワナ~ミドルシニア編

35歳転職限界説は過去の話。即戦力となる40歳以上のミドルシニアにも多くのスカウトが届く時代になった。ところが、キャリアや経験が豊富だからこそ、陥りやすい職務経歴書のワナがある。中堅・若手とは異なるアピールポイントや相手に響く内容にするための書き方のコツは何か。ミドルシニアの職務経歴書を数多く指導してきたニューベリービジネスコンサルティング エグゼクティブ・コンサルタントの丸誠一郎さんに話を聞いた。

目次

――現在のミドルシニア層の転職市場について教えてください。

「コロナ禍の影響で、ミドルシニア層の転職活動は2020年の下半期以降、非常に活発になっています。昨年春の緊急事態宣言中に今後のキャリアを熟考する人が多かったようです。転職したばかりの人でも、コロナの余波で事業計画が変わり、担当予定だったプロジェクトがなくなってしまった、という理由で再び転職を志す人もいました」

「デジタル化をはじめ、最近の産業界で目立つ経営手法の変化も、ミドルシニア層の転職を後押ししています。例えば、金融業界は"人材大移動"の様相を見せており、メガバンクだけで40~50代が5万人ほど、転職活動をしていると言われています。背景には、ネットへのシフト、それに伴う店舗の統廃合で必要人員が減っていることがあります。以前とはキャリアや転職に対する環境やとらえ方が変わり、40代からセカンドキャリアを考えるように指導する企業も出ているほか、副業やビジネススクールへの通学を認めるなど『人生100年時代』へ向けた環境が整いつつあることもミドルの転職を後押ししています」

作成のポイントは「将来の目標」と「転職に向けた準備」

――ミドルシニアが職務経歴書を書くうえで、最も重要なポイントは。

「最も重要なのは、将来の目標を明確に持つことです。転職先でどのような仕事に取り組んで業績に貢献したいかを、具体的に考えて言葉にしてください。最も怖いのは、自分の進路を考えていないことです。極端な例ですが『役職定年後にカフェを開く』でもいいので、70歳まで働くことを前提に、自分が取り組みたいことを決めて計画を立ててください。これは職務経歴書の作成以前に、ミドルシニア層が転職活動に臨む大前提として必要です」

「そのうえで、職務経歴書の役割を理解することがポイントです。職務経歴書は、自分をPRするカタログのようなもの。人事担当者の元には200通、300通と大量の職務経歴書が届くので、そのなかで目にとまる内容にしなければなりません。書き方としては、自慢話を羅列するのではなく、直近5年間どのような仕事に関わり、どう利益を生み出してきたのかを見せるよう意識してください」

「もう1つ大切なポイントは、経歴を列挙するだけではなく『転職に向けて準備が万端だ』とアピールすることです。例えば『支店長を務めながら英会話スクールに通い、ビジネス英語力を向上させてきました』といった内容です。アピールするものがない人は、今からでもビジネススクールに通ってから企業に応募したほうが、好条件で転職できるでしょう」

過去の栄光にすがりつく、長過ぎる経歴書はダメ

――評価が高い職務経歴書の内容は。

「ここ5年間で自分は何を得たか、会社と社会にどの程度貢献したか、転職先の会社で何をしたいか、を最初に8行で書いてください。金融業界ならCIA(公認内部監査人)のように、専門性の高い分野で資格を持っていることが強みになります。特定分野のパイオニア的存在であるなど、実績と自分の強みを分かりやすく示している人は評価が高くなります。応募企業や希望するポジション、職種に関わる経歴があれば、その部分は詳しく書いてアピールしましょう。応募先に合わせて情報を取捨選択していくことが、最も大切です」

――評価されない職務経歴書の例を教えてください。

「自慢話や過去の栄光に終始するのは避けましょう。『社内で何回表彰された』『支店の記録を塗り替えた』『●●部の部長で部下は何人いて~~』というように、特定の組織内の話をしても相手には評価されません。『会社でどういったことに取り組んできたか』を詳細に書いたほうがプラスになります。『コンプライアンス担当として◎◎件の◎◎に対応してきた』と専門性や実績を強調するのもいいですし、『営業としてあるお客さんを長く担当してきた』と信頼関係を築いて仕事を任されていた点をアピールすることも、高評価につながります」

「ミドルシニア層は経験が豊富な分、4枚や5枚など多く書く人が少なくないですが、必要以上に長い経歴書を作成しても良い評価にはつながりません。1枚目にキャリアについて、2枚目に資格と最終学歴についてまとめてください。新人時代のように20年以上も前のことは1行程度でかまいません。仕事に空白期間がないことが分かればいいのです」

「何でもできます」は逆効果、専門性をアピール

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丸誠一郎さん ニューベリービジネスコンサルティング エグゼクティブ・コンサルタント
1978年大和証券入社。クレディスイス証券会社を経て2004年ニューベリービジネスコンサルティングを設立。人材紹介にて実績を積む。

――中堅層や若手と違う、効果的なアピールポイントは何でしょうか。

「『即戦力』として力を発揮できるか、ということです。ミドルシニアは、会社の経営幹部としての活躍を期待されています。5年後に花開くのでは遅く『1年目から3割バッターになれるかどうか』が採用の判断基準になります。そのためには『何でもできます』というPRは逆効果。どの分野で強みやスキルを持っているスペシャリストか、ということを明確に示してください」

「ただ、即戦力として活躍できるかは、職務経歴書の記入事項だけで伝えることはできません。職務経歴書以外に、転職サイトの登録情報や実際に会っての面談も含めて、その人のスキルを見極めていくのがエージェントの役割です。登録情報では、現職での評価が端的に表れている数字として『現在の年収』も参考にします。面談で話してみて『光るものを持っている』と判断して求人企業に推薦する人に共通するのが『高校や大学以降で10年以上、1つのスポーツや趣味に打ち込んでいた』という要素です。確固たる自分の軸や哲学を持ち、ビジョンも明確なため、採用後の活躍を予想しやすい面があるのではないでしょうか」

――職務経歴書以外に転職サイトに登録する情報で、注意すべき点は。

「当然のことながら、転職サイトの登録情報は数多く書かれているほうがスカウトしやすいです。『即戦力になれるか』が大事なポイントですが、ミドルシニア層であってもポテンシャルを全く見ないわけではありません。サイトに登録されていた『海外で接客アルバイト経験あり。帰国後に外務員試験の勉強』という経歴から、英語力とビジネスセンス、金融業界への意欲が十分とピンときて、全く異なる業種にいた人をスカウトして金融機関に紹介し、成約した例もあります」

「注意しなければならないのは、35歳までに3回など転職回数が多い人や、1社に1~2年の在籍といった短い期間に転職を繰り返している人です。入社後に活躍できるか不安に思われてしまうので、そのような場合は明確な理由を説明できるようにしましょう」

ミドルシニアがスカウトされる職務経歴書のポイント

  1. 1

    直近5年間や志望先に関わる経歴を中心に端的にまとめる。

  2. 2

    専門性を持つ分野を明確にし、即戦力人材だと伝わるように。

  3. 3

    過去の栄光よりも、転職のための準備や意欲を見せる。

ミドルシニアがスカウトされる職務経歴書テンプレート

職務経歴書

2021年6月30日 現在
日経 英太※1

■要約

1988年○✕銀行に入行後20年間勤務。2007年○◇証券会社に転職、企画、業務、営業部門を経験し2016年よりコールセンターに勤務。現在は契約社員として受電・架電業務全般の業務を行っています。雇用形態は契約社員で勤務時間は8:30~17:00のフルタイムです。(現在コロナ禍で時短勤務となっています)最近の実績としては昨年10月より男子社員2名の研修を行いながら一日平均20件の電話対応を行っております。電話応対と人材育成には多くの成果をあげております。※2

※1ヘッダー中央に、姓名(姓名ローマ字も)、下段にEMAIL、電話番号を記載します。

※2職歴要約は、こんなに「苦労している」「かつてはこんなに活躍していた」「昔は行内で嘱望されていた」という栄光の歴史は不要。今、即戦力としてどう役に立ちたいかを明確に書きます。

■職務経歴※3

期間 業務内容
1988(昭和63)年

2007(平成19)年
(在籍20年間)

株式会社○×銀行に入行
△◇支店に配属。営業課、融資課を経験
□○支店に転勤。融資課主任として本部申請業務を担当
人事部付き経産省に業務出向。×○協会で助成金請求審査を担当。
外為事務センターに勤務。国際電信、輸出L/C、日銀円決済を主に担当し幅広く外為業務を習得する。
本店営業部に転勤。外国課副課長として主に輸出関連と外為送金業務を担当。
人事部付、○×クレジットに業務出向。カード発行部にてカード発行審査を担当。
△□支店に転勤。次長として支店の運営にあたる※4
2007(平成19)年一身上の都合により退職

※3直近の職歴から遡って記載し、即戦力として何をしてきたか、最初の5行で分かるように記載します

※430年以上前の、外為業務、審査業務、融資業務の実績を記載しても、この分野で直接的に活躍する業務は通常ありません。5年以上前の職歴は、極力サマリーのみを1-3行でまとめ、功績を妙に強調しないで書きます。

期間 業務内容
2007(平成19)年

○◇証券株式会社に入社
インターネット事業部業務課に配属。内部管理者責任者として業務規程作成、各種業務管理を行う。
その後全国にあるインターネット専門店舗「ウェイブ」の支店長に就任、PC操作の説明を中心に口座開設顧客数大幅増加の成果を上げる。※5
○◇証券株式会社インターネット事業部は吸収・分割により×○証券に移行

2013(平成23)年

引き続きウェイブの支店長としてネット取引拡大のためPC操作説明と口座開設数増加に注力する。

2016(平成28)年

ウェイブの支店長とカスタマーサービス部コールセンターを兼任。受電・架電の業務が加わる。

2018(平成30)年

支店長から、新たに研修責任者として就任。コールセンターでの受電・架電業務と兼任し現在に至る。

現在

【業務内容】証券業務全般の照会対応、研修による人材育成 ※6
商品説明・PCやスマホからの操作説明・キャンペーン照会、事務手続き説明・案内、相続手続き説明、メール照会対応・その他信用取引・FX取引の与信管理等全般。

【対応件数】 20~25件/1日

【主な経験業務】
・新規業務、規程変更、法律改正時の勉強会講師
・関連する資料作成

【マネジメント経験】
・新人、転入者、バート社員への研修、年間約10名を担当

※5下線部分の具体的業務が、志望先ポジションに刺さるようであれば、数字、具体名を混ぜて自慢話でなく記載します。

※6記載事項に、能力アピール、即戦力の強調がなく、何がしたいのか、何が出来るのかが、感じられません。専門用語が少なく、支店長、研修責任者としての、リーダーシップが感じられません。

■活かせる経験

・研修プラン作成、研修後のフォロー、高齢者への応対

■PCスキル

・Word:ビジネス文書の作成や編集、保存、印刷ができる ※7
・Excel:IF関数、データ集計

※7出来て当たり前のスキルは、不要です。

■資格及び最終学歴※8

・金融先物取引業務内部管理責任者資格取得 (2007年10月)
・金融先物取引業務外務員資格取得 (2007年7月)
・証券外務員資格一種資格取得 (2007年5月)
・内部管理責任者資格取得 (2007年5月)
・シニアクレジッター資格取得 (2007年3月)
TOEIC 820 (1999年)※9
・Boston University Business School MBA (1988年6月)
普通自動車第一種免許取得 (1985年)※10

(2021年6月30日現在)

※8TAB活用、ゴシック体活用、フォント統一をし(フォントサイズは2種まで)、あらゆる箇所を読みやすく整えます。

※9記録が古すぎるので、受験してアップデートすべきです。

※10運転手のポジションではないので不要です。

■志望理由と自己PR※11

銀行・証券という金融業界の中で長らく仕事をしてまいりました。55歳を過ぎましたがコールセンターでの応対と研修を通じての人材育成に活路を見いだし引き続き仕事を続けたいと考えております。
コールセンター業務も5年を超え長くなっております。顧客のニーズを的確に聞き出し、迅速丁寧な対応を心がけております。御社でもこれまで同様活躍できればと思っております。

※11最も重要で、海外企業向けにはCover Letterに相当します。上段の要旨と合体し、人事担当の眼に最初に止まるようにします。

この職務経歴書の監修

ニューベリービジネスコンサルティング

(日経転職版・編集部 木村茉莉子)

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