転職Q&A

「出世」と「やりたい仕事」、どちらを優先させるべき?

大学を卒業後、都銀に入行して9年目になります。主に法人営業を中心にキャリアを築いてきました。3年前にM&Aの実務を経験したいと思い、転職を考えたことがありましたが、法人営業の部署で結果を残せば希望部署に推薦してもらえることを知り、転職せずに弊行に残るという決断をしました。

この3年間、希望部署への異動のために全力で働き、同期の中でも常にトップ3の成績を残してきました。しかし、それゆえに異動の可能性がなくなってしまいました。会社としては、優秀な営業マンを他部門に異動させるメリットがないというのが理由です。

次の異動先は本店の営業本部で、非常に悩んでいます。本店営業部は社内でも優秀な人材が多く、仕事に魅力はあります。また、転職をせず会社に残るのであれば、出世の近道にもなります。このまま今の会社で営業の仕事を続けていくべきなのか、本当にやりたいことのために転職をするべきなのか、アドバイスをいただけないでしょうか。(31歳・男性)

どちらを選択するかは個人の価値観によって異なります。将来への希望や覚悟などを総合的に考えて、ご自身で結論を

キャリアコンサルタントとして転職希望者と面談をしていると、同じような悩みを持つ方に会うことがよくあります。希望の仕事に就くために全力で頑張ってきた結果、その部門では絶対に必要な人材となってしまい、最終的には希望部署への異動がかなわない。「会社にだまされた」と怒っている人もいれば、「自分がこれだけの実績が残せるとは、思ってもいなかった」と結果に満足されている人もおり、受け止め方はさまざまです。

今回のご質問は、「転職」するか、本店営業部に「栄転」するかという二択ですが、これはご本人の価値観に大きく左右されると思います。もしM&Aの実務を行いたいという強い希望があるのなら、何が何でも転職するべきです。人生は一度しかありません。定年退職後に、「あの時、なぜ転職しなかったのだろう」と後悔するのは避けたいですよね。どうしてもM&Aの仕事をしたいという思いがあるのなら、今すぐ転職活動を開始したほうがいいでしょう。

しかし、転職に少しでも迷いがあるのでしたら、慎重に考えることが重要です。このコラムでも総合職と専門職の違いという点に触れてきました。日本企業の終身雇用という認識が薄まってきた現状においても、就業環境は総合職という雇用形態が根付いています。

私が大学院で学んでいた時に、米国人の教授から「日本人に職業を尋ねると、多くの場合、その人の勤務先の名前が返ってくる」と指摘をされたことがあります。質問者の場合はいかがでしょうか。職業を聞かれた時に、銀行での法人営業と言いますか? それとも勤務先の銀行名を伝えますか? ちなみに私の場合は、常にキャリアコンサルタントと答えるようにしています。

総合職の場合は数年ごとにジョブローテーションがあり、何が自分の職業(キャリア)かを判断するのが難しいことはあるでしょう。したがって、職業を伝えるよりも、勤務先の名前を挙げるほうが手っ取り早いというのも事実です。特に、大手企業に勤めているのであれば、職業名を伝えるよりも、企業名を伝えたほうが、相手がイメージしやすいという点もあります。

また、それ以外の理由もあります。欧米人と日本人の大きな違いの一つは、日本人は会社の看板で仕事をする人が多いと思います。これは国民性や環境などによると思うのですが、日本人は大手企業の名前に安心感を覚えます。そこで働く人も、大手企業に勤めていることをステータスと考えます。かつてに比べれば、ベンチャー企業などの新興勢力にも注目が集まるようになってきていますが、米国などに比べれば、いまだに未成熟なマーケットです。

そのような中で、現在勤めている会社の看板を捨てられますか? また、その会社での出世の可能性を捨てて、転職してM&Aという業務に執着することはできますか? これは個人の価値観なので、ご自身に真剣に考えてもらわなくてはなりません。9年間で築き上げてきたものや、社内に残った際の将来への可能性を捨てる覚悟があり、どうしても希望の仕事をやっていきたいと考えるのであれば、転職をしたほうがいいでしょう。一方、転職へ迷いがあるのならば、今の会社に残るほうがいいのかもしれません。それらの点を踏まえて、考えてみてはいかがでしょうか。

転職先がご決定された皆様へ
日経転職版を通じて転職が決まったことをご報告いただいた方に、お祝いをご用意しております。