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MBAランキング、AIなど特色あるコースが人気 国公立より安い私立も

大人の学び直し企画(上) 

在宅勤務の拡大で学び直しに関心を持つビジネスパーソンが増えるなか、AI(人工知能)や金融戦略など特徴を明確に打ち出したMBA(経営学修士)プログラムの人気が高まっている。また、働きながら通う学生の比率が9割以上のコースが約半数を占めた。コースごとに学費や受講生の平均年齢の幅が大きく、人脈づくりや特定分野の研究実績など、自身が優先するポイントに沿ったMBA選びをすることが重要だ。

2020年3月から5月にかけて実施した本調査は、国内でMBAプログラムを提供する主要大学院から日経HRがデータを回収・集計し、項目ごとのランキングを作成した。回答した大学院は56校。MBAは一般的に2年制のカリキュラムで、修了するとMBAの学位を取得できる。かつては企業派遣による海外留学が主流だったが、最近は国内MBAの増加をうけ、私費で通うビジネスパーソンが増えている。

【学費】

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1年目の学費の平均は約135万円 国公立より安い私立も

MBA取得を考えたとき、誰しもまず頭をよぎることの一つが学費だろう。上の表にある「初年度納入金(2年制)」は、入学金、授業料のほか、実習費、研究費など、1年目に払う総額を指す。全体平均は135万2000円、私立平均は154万8000円、国公立平均は85万6000円と学校ごとに大きな開きがあった。
国公立の場合、文部科学省が定める「標準額」に基づいて各校で決めるため、ほぼ横並び(81万7800円)になっているが、標準額より低くしたり高く設定したりする学校もある。国公立の1位(学費が低い順)は東京都立大学大学院で66万1800万円(都民対象)。都民以外の場合でも80万2800円(2位)と他の国公立より低め。公立校では、このように該当地の居住者の学費が割安になることがあるので頭に入れておきたい。
私立は学費が高いというイメージを抱きがちだが、3位までは国公立の標準額(81万7800円)より低いという結果となった。一方、私立の一部の初年度納入金は300万円を超える。エグゼクティブ向けコースやすべての授業が英語の全日制コースなどで、教員を海外から招いたりビジネス界の著名人を講師に迎えたりすることで費用がかかるためと考えられる。

【入試倍率】

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特色あるコースが上位入り 企業は実践性を評価

大学院入学の難度の目安となるのが入試倍率だ。「入試倍率」は合格者数÷受験者数で計算し、全体平均は1.9倍、国公立平均2.1倍、私立平均1.8倍で、国公立のほうがやや入学難度が高い。なお、大学院の合格者数は数人から100人超と非常に幅広く、100人規模の大学院では入試倍率が上がりにくいことに留意する必要がある。
ランキング上位にはAI(人工知能)研究などで注目されている京都大学大学院(3.5倍、2位)、国際関係で定評のある青山学院大学大学院(3.3倍、3位)など、特色あるMBAが並んだ。
企業の人事担当者からは、京都大学大学院は「工作機械分野の先端技術の研究と資格取得によい」(機械大手)、一橋大学大学院について、「経営、財務関連教育が充実」(自動車部品大手)などの声が挙がる。そのほか「学術的な部分だけでなく実践に生かせる学びがある」といった、研究面のほかビジネスへの実践についても期待されているようだ。

【平均年齢】

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年齢層の違いがコース選びの鍵に

MBA取得の効果として挙げられるのが大学院で生まれる人脈だ。普段の仕事上の付き合いとは異なるタイプの多様な人々との出会いは新たなコラボレーションにつながったりイノベーションの種となったりする可能性がある。
全体の「平均年齢」は35.9歳。最も高いのは関西学院大学専門職大学院で45.0歳、最も低いのは一橋大学大学院で26.0歳。関西学院大学専門職大学院は高い順、低い順どちらにもランクインしている。同大学院の企業経営戦略コースは高い順の1位。経験を重ねてきた世代が経験を総括するために通う人が多いのかもしれない。一方、国際経営コースは低い順の5位。すべての授業が英語で高い語学力が求められるため、グローバル人材としての成長を目指す若い人材が集まるようだ。
自身の業務にすぐ役立つような実践的な研究を期待して進学する場合、ともに学ぶ同級生の実務経験年数もチェックしたい。授業の質にも影響するため、多くのコースが受験資格に実務経験を挙げている。一般的には3年程度の実務経験が求められるが、不問とされるケースもある。社会人向けとうたっているコースや、中小企業診断士のようにビジネスでの実務経験が生きる資格の取得が可能なコースは、社会人経験の長い人が集まり、平均年齢も高くなりやすい。同世代が多い大学院に進み、より共感し合える仲間と切磋琢磨するか、あえて異なる年代が多い大学院に進み、新しい刺激をもらうか。それぞれに合った学び方を選びたい。

【働きながら働く人の比率】

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仕事を続けながら通う人が大半 オンライン拡大で学びやすく

ビジネスパーソンがMBA取得を考えたとき、働きながら通えるか、キャリアを一時中断するかどうかも検討項目となるだろう。各大学院の「働きながら通う人の比率」の分布をみると、平均は66%。「100%」が最多で26%、次いで「90%台」22%となり、働きながら通う人の比率が90~100%の大学院が約半数を占めた。ビジネスパーソンの圧倒的多数が仕事を続けながら通っていることがうかがえる。夜間開講、土日開講などの開講形式が通いやすさの鍵となる。
一方、「0%」の回答は14%。全日制の国際大学(IUJ)大学院などが代表例だ。全日制は日中に開講されるため、一般的な会社勤めのまま通うのは難しいが、夜間や週末に開講するコースに比べ、時間的にゆとりがある点がメリット。企業派遣で通うケースも少なくない。ただ、日経HRと日本経済新聞社が今年2~3月に上場企業と一部有力未上場企業の人事担当者を対象に行った調査(回答社数805社)では「直近3年間で、大学院に通学する社員に補助を行ったか」と聞いたところ、「補助制度がない」と回答した企業が約6割に上った。働きながら自分で学費をねん出してMBAに通わざるを得ないケースが多いという実態があり、「働きながら通う人の比率」の高さにつながっているようだ。
大学院では講義のオンライン化が進んだ。場所の制約がなくなり移動時間が不要なため、多忙なビジネスパーソンにとっては利便性が上がったといえる。学び直しの追い風が吹く今、新しい学びにチャレンジしてみてはどうだろうか。

【グロービス経営大学院経営研究科副研究科長 村尾佳子さん】

コロナ以降、当校のオンラインコースの受講者が3倍以上に増えるなど、社会人の学習意欲の向上を感じている。以前は会社が用意してくれたキャリアパスを進めばよかったが、コロナと共生する新しい時代に、自分らしく生きるためにはどうしたらいいか、を見つめ直すきっかけになったのではないか。
学びを啓蒙するセミナーを開催しているが、オンラインで開催したところ、リアルイベント時の10倍の約2000人が参加した。40代、50代が特に増えたほか、ベトナムやインドなど海外駐在者もいて、年代や地域の壁を越えた学習意欲を感じる。関心の高いテーマは、キャリア形成、ニューノーマル。
当校は今後、都合に応じて対面とオンラインの授業を自由に使い分けるハイブリッド化を推進する。「昼間会社で働き、夜大学院に通う」という画一的な選択肢は不自然になっていくかもしれない。社会人の「Work(働く)」と「Life(生活)」のバランスが変わるなか、「Learn(学ぶ)」をより自然な形で提供していきたい。

(日経転職版・編集部)

 

 
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